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【創作】空が落ちてくるのが怖い男の話

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空が落ちてくるのが怖い男の話

とあるところに一人の男がいた。
それなりに幸せな日々を送る彼だが、1つ心配事があった。
それは彼の、いや彼らの世界の上に広がる空のことだった。
「あの空はいつか落ちてきたりしないのだろうか」
大きな大きな空だ。
あれが落ちてきたら、きっと大惨事になるだろう。
彼はいつも幸せそうな友達に聞いてみた。
「キミはあの空が落ちると考えたことはないか?」
「空が落ちる?そんな訳あるはずないだろう」
幸せそうな友人は笑いながらそう答えた。

ヤツはきっと能天気なんだな。
だからあんな風に幸せそうに暮らしていられるんだ。
彼はそう思い、また別の友達に訊ねることにした。
いつも本ばかり読んで気難しそうな顔をしている友達だ。
こっちの友達ならば、色々なことを知っていそうだし
空が落ちてきたときにどうすればいいか
知っているかもしれない。
「空が落ちてきたら、何をすればいい?」
「それは杞憂というものだよ」
友達はつっけんどんに答えた。
杞憂の意味がよく分からなかったので訊ねてみたら
「それはまさに今のお前のことさ」
と友達は答えた。
よく意味が分からなかったが、
少なくとも自分の不安に対して
答えてくれているわけではないと男は感じた。

ある日、雨が降った。
雨は空にある水が落ちてくるのだという。
「水は落ちてくるのだ。空が落ちないとは限らない」
ある夜、流星を見た。
鋭く輝きながら落ちる星に彼は戦慄した。
「星ですら落ちるのだ。空が落ちる証拠に違いない」
だが彼の言葉聞くものはいなかった。
誰もが彼の不安を鼻で笑い飛ばした。
「雨や星と空とは違うものだよ」
皆はそう言うが彼は不安だった。
どちらも空にあるのだから同じじゃないか……。

しかしある時、彼の言葉に頷く者が現れた。
そうして言った。
「あなたの不安は正しい」
彼は自分の考えがはじめて肯定されたことに安堵した。
だがその人は続けてこう言った。
「皆が空が落ちてこないと信じているのは政府の陰謀だ。
空が落ちてきたときの安全対策を講じるには巨額の資金がいる。
その資金をケチって政府は人民の命を危険に晒しているのさ」
彼はショックを受けた。だが同時に納得もした。
だから誰もが自分の不安に取り合ってくれなかったのだ。
彼ははじめて、自分が納得する答えを得ることができたのだ。
その人の紹介で、
彼は同じ不安を抱える仲間にも出会うことができた。
やっと自分の居場所が見つかったと彼は思った。
そうして言われたとおり、
私財を投じて丈夫な丈夫なシェルターを買った。
そしてシェルターの中で寝起きするようになった。

だがシェルターの中は狭い。
やはりストレスが溜まる。
幸せだったはずの生活も、気がつけばギスギスしはじめていた。
苦しい。
「たまには外に行きたいな」
ふと気づけばそんな言葉がこぼれていた。
その言葉に仲間が怒った。
「外は危険だ。空が落ちてくるぞ」
それは分かっている。
だがこの生活はあまりにも不便だ。
そう続けた彼を慰めるように仲間が言った。
「政府が私達を守ってくれないのだから仕方ない」
そうか。
自分がこんなに不自由な思いをするのは政府が悪いのだ。
彼は政府を恨んだ。

ある日、彼のシェルターを訪れる者がいた。
来訪者は言った。
「構造物の安全点検です」
この世にこの場所以上に安全な場所などないというのに
一体何を言っているのだろうと彼は思った。
しかし無遠慮にシェルターを見て回った来訪者は彼に告げた。
「防火上危険な造りです。改善をお願いします」
もっと扉を大きくし、複数の出入り口を設けよと言う。
「それは無理です」
彼は答えた。
来訪者の指示に従ってしまってはシェルターの安全が損なわれる。
拒否する彼に来訪者は冷たく告げた。
「法律の定めによるものです。従わなければ罰せられます」
なぜ自分がまるで犯罪者のように扱われるのだろう。
彼は混乱した。

彼は来訪者との出来事を仲間に相談してみた。
すると仲間から驚くべき理由が告げられた。
「政府は真実を知る自分の存在が邪魔なのだ。
だから難癖をつけて自分たちを迫害するのだ。
来訪者には政府がお金を握らせて、そうさせているのだ」
そうか。
シェルターの外は政府だけでなく他の人も敵になるのか。
彼はそう思い、絶望的な気持ちになった。
「でも大丈夫」
「私達がいるから」
そう、彼には仲間がいる。
ずっとこのシェルターの中で生きていこう。
彼はそう心に誓った。

 

心のよりどころとなるもの

先日SNSで、友人の発言が目に止まった。
「誰でも何かの思想に染まってしまう可能性はある」
「人は自分が信じたいものしか信じない」
真理だと思う。
そしてそこから別の話を思い出した。
少し前に、原発事故から自主避難して放射能に怯える人や、
子宮頸がんワクチン予防接種後の体調不良を訴えた人がいた。
しかし医師などは「何を言っているんだ」と取り合わず
寄り添ってくれたのは、
反原発とか、反ワクチンの人だけだったという。
そうして思想に染まってしまったり、
どうも後ろ暗いところのある団体に取り込まれてしまったり。
そういうことが起きているのが現実のようだ。

そんな話を聞いて、
空が落ちてくると不安になったとき、
科学的な知識とカウンセリング的な知識を持った人が
ケアに入れる仕組みがあればいいと思ってはみたが、
現実には信じたいものしか信じられない状態であり
外からの中立な介入はなかなか難しいのだろうとも思う。

科学と思想と安全と。
自分自身も情報を提供する立場にいるという意味で
ついつい関心を寄せてしまう分野だ。


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