製造業の信頼性を揺るがしかねない大問題
会社などでは「他部署の動きも知っている」ことが喜ばれることも多い
そのため、ジョブローテーションなどのシステムにより
3年程度で様々な部署を経験させるという教育方法がある。
良いことではあるだろう。
だがそれも、はっきり言って職種による。
そしてエンジニアは基本的にはそのような育成は向いていない。
人材育成計画の弊害
仕事のなかで聞いた話だ。
「技術職の係長レベルの人ですら図面を読めないことがある」
どういうことかと言うと、
ジョブローテーションなどにより別の部署から回ってきたため
図面や工業の知識が無いままに、その仕事に就いていることがあるというのだ。
何と恐ろしい話なのだろう。
製品開発の現場において、係長というものは
本来ならば、部下と共に設計の方針を考えたり、図面や試作品のチェックを行う立場だ。
経験豊富で、技術のことは良く知っており
「この設計だと、ココが危ないんじゃないか?」
などの意見を出す存在でもある。
それなのに、そのポジションにいる人が技術に疎い、図面が読めないという。
これはすなわち、製品の信頼性に対する第一の防波堤が機能していないことを意味する。
非常に危険かつ、非常に不合理な話だ。
しかも、そのような人材育成を行っている企業が少なからずあるという。
他の部門なら良い結果をもたらす育成方法かもしれない。
しかし技術分野や、エンジニアの場合、
熟練といえるレベルに到達するためには、長い時間と経験が必要になる。
3年くらいで担当を次々と変えていたのでは、熟練の領域には達することができないのだ。
マルチな能力VS専門特化の能力
確かに関係する周囲の動きを熟知し、広い視点から業務を行えることは強い。
フリーランスでもそうだが
1つ2つの得意なことに加えて、浅く広いスキルを持っている人材は便利だ。
企業が社内にそのような能力を持つ人間を増やしたいと思うのも頷ける。
でもちょっと待ってほしい。
例えば今日、あなたの頭を開頭手術する担当医が
「実は去年までは皮膚科医をやっていたんですよー」
と言い出したら、ちょっと不安を覚えないだろうか?
それだけではない。歯を見てもらおうと行った歯科医が
「歯科の勉強はしてないんです。ずっと内科でしたから」
などと言い出したら、意地でも口を開けたくなくなるのではないか?
技術の知識の無い者を管理職に置くというのは、そういうことだ。
エンジニア、技術者というのはいわば職人なのだ。
マルチであることよりも、特定の部分に特化しているべき職業なのである。
原因と対策
恐らくだが、この問題の原因は
技術分野の現状に詳しくない経営層、人事部門にあるのだろう。
外から「エンジニアは職人と同じだから、同じことを長くやる必要がある」
そう言われても実感として分からないというのが現実なのではないだろうか。
そして対策だが、
技術分野で長くやってきた人間が、経営層に食い込むことだと思う。
大きな会社であればあるほど、
社長をはじめとする経営層に、技術の専門分野を歩いてきた人間はいない。
だいたいが、経済学部出身などの文系の人だ。
(こういうところにも「工業系」の悲哀があるのだが)
不公平感のない、一律の仕組みというのも大事だとは思うが
業種による特性、業種に適した人材育成というのも
大切になるのではなかろうか。
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